臨時通信 第1号

研修会におけるパネルディスカッションにおいて、座長を務められた豊福肇先生から「Hot Issue」として、豊福先生が参加された“第51回コーデックス食品衛生部会(2019年11月4~8日)” において、「食品衛生の一般原則とHACCP Annex」の部会での改訂作業が完了したことから、その概要をご報告いただきました。

最新の情報となりますので、是非、ご覧ください。

Hot Issue
第51回コーデックス食品衛生部会「食品衛生の一般原則とHACCP Annex」改訂作業が完了
【特別報告】 理事 : 豊福 肇 先生 (山口大学共同獣医学部病態制御学講座 教授)

 

第51回コーデックス食品衛生部会(2019年11月4~8日)において、「食品衛生の一般原則とHACCP Annex」の部会での改訂作業が完了しました。(Step 5/8で総会での採択を勧告)
順調にいけば、2020年7月に開催される第43回コーデックス総会において最終採択される見込みです。

1. 構造上の変化 (図参照)

イントロダクションと共通部分の後、第1章としてGHP(一般衛生管理)、第2章としてHACCPシステム及びその適用のためのガイドラインが続いている。

2. 主な変更点

  • 食品安全へのマネジメントコミットメント(食品安全文化を含む(下記4参照))が導入された。
  • 一般衛生管理とCCPの関係性が明確になった。
  • すべてのFBOは、自分が製造・加工・販売する食品に影響するハザードを認識するが必要あり、FBOsはハザードの消費者の健康への影響を理解したうえで、それを適切に管理すべきある、としたこと。
  • HACCPの定義がなくなり、
    • HACCP Plan:食品ビジネスにおいて重要なハザードのコントロールを保証するためHACCPの原則に従って作成された文書(文書のセット).
    • HACCP System:HACCPプランの作成、および当該プランに従って手順を実施すること
    が示された。
  • Food Hygiene System(GHPとHACCPをあわせた概念)という言葉が創設された。
  • 共通部分に一般原則が新設された。(下記「3. 共通事項 : 一般原則」参照)
  • GHP requires Greater Attentionの概念が導入された。
  • GHPの“操作のコントロール”に製品及びプロセスの記述、GHPの効果に対する考慮、GHPのモニタリング及び改善措置、検証並びにアレルゲン管理が追加された。
  • HACCPについてはハザード分析の重要性、及びハザード分析では重要なハザードを特定することをハイライトした。
  • 原則6に妥当性確認と検証のサブセクションを設けた。
  • 原則3を“妥当性確認されたCLの設定”とした。
  • GHPの管理措置とCCPの管理措置の対比表を作成した。

 

3. 共通事項 : 一般原則

  • 食品安全及び適切性は、科学に基づく予防的アプローチ(例、食品衛生システム)を用いてコントロールすべき。 GHPは汚染物質の存在を最小にできる環境で製造及び取り扱われることを保証すべき。
  • 適切に適用されたPRP(GHPを含む)は効果的なHACCPシステムの土台を提供する。
  • 各食品事業者(以下、「FBO」という)は 原材料、その他の原材料、製品、調理工程、食品が製造または取り扱われる環境、に関連するハザードを認識すべきである。
  • 食品、食品プロセスの性質、可能性のある健康に対する悪影響によっては、ハザードをコントロールするのにGHP(GHP with Greater Attention)の適用で十分である。 GHPの適用だけでは不十分な時には、GHPとCCPにおける管理手段の組合せを適用すべきである。
  • 許容される食品安全レベルを達成するのに必須の管理手段は、科学的に妥当性確認されるべきである。
  • 管理手段の適用は食品の性質及び事業のサイズに応じて、モニタリング、改善措置、検証および文書化の対象となる。
  • 食品衛生システムが、修正が必要かどうかを決めるためにレビューすべきである。 これは定期的に、また食品事業に関連して、ハザードまたは管理手段に影響しうる重要な変更(新規工程、新原材料、新規製品、新しい装置、新しい科学的知見等)が生じた都度実施されねばならない。
  • フードチェーン全体を通じて.食品安全と適切性を保証するため、すべての関係者と、食品及び食品プロセスに関する適切なコミュニケーションを維持すべきである。

 

4. 食品安全文化

食品安全文化を育てるには以下のエレメントが重要である。

  • 安全な食品の生産及び取扱いにマネジメント及びすべての従事者がコミットメントする。
  • 正しい方向性をセットするリーダーシップ及び食品の安全な取扱いにすべての従事者が関与する。
  • 食品事業のすべての従事者が食品衛生の重要性を認識する。
  • 食品事業のすべての従事者の間で、オープンで、明確なコミュニケーション(逸脱及び期待に関するコミュニケーションを含む)を行う。
  • 食品衛生システムの効果的な機能を保証するための十分なリソースがあること。

 

5. 共通部分になる重要な概念

共通部分の第4~第7段落に今回の改訂のなかでも重要な概念が紹介されている。

第4段落

FBOは食品に影響するハザードを認識する必要あり。FBOsはハザードの消費者の健康への影響を理解し、それを適切に管理すべき。 Good Hygiene Practices (GHPs) はそのビジネスに関連するハザードを効果的にコントロールする土台を提供すべき。 FBOs のなかには効果的なGHPの実施が食品安全を取り組むのに十分な場合もある。

第5段落

食品安全に取り組むうえで実施するGHPが十分か、特定されたハザードをどのようにコントロールするかはハザード分析を通じて決定することができる。 しかし、全てのFBOs にこれを行う専門的知識があることはない。もし、FBOがハザード分析を行えない場合、 そのFBOは外部のソース(規制機関、学会、または業界団体等)が作成した、適切なハザードの特定とそのコントロールに基づく、適切な食品安全規範に関する情報に依存することができる。

例えば、安全な食品を生産するための規制の要求事項は、しばしば規制機関が実施したハザード分析に基づき作成されている。同様に業界団体が作成した食品安全手順を記述したガイダンス文書は、特定のタイプの製品のハザードとコントロールに関する知識を有する専門家が実施したハザード分析に基づいている。外部作成のgenericガイダンスを用いる場合、FBOはガイダンスが自施設の活動に対応しているか、全ての関連するハザードがコントロールされているか、保証すべきである。

第6段落

全てのGHPは重要でも、いくつかのGHPsは食品安全上より大きなインパクトがある。 従って、いくつかのGHPは食品に関する安全性の懸念に基づき、安全な食品を提供するために、大きな注意(greater attention)が必要かもしれない。例えば、RTE食品に直接接触する器具や作業台表面は、壁や天井の清掃よりgreater attentionが必要である。なぜなら食品接触表面が適切に洗浄されていない場合、その食品の直接汚染につながるからである。Greater attentionにはモニタリングや検証の頻度を上げることが含まれる。

第7段落

ある状況では、食品操作の複雑さ、製品及び工程に関連するハザード、技術の進歩(例、ガス置換包装による賞味期限の延長)、製品の使用法(例:特定のダイエット目的の製品)によっては、GHPの実施だけでは食品安全を保証するには十分でないこともある。そのような場合、ハザード分析を通じてGHPによってコントロールされない重要なハザードが特定されれば、 そのハザードはHACCPプランで取り組むべきである。

以上

(更新:2019.12.15)

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