定期通信第24号は、平成26年度研修会 聴講記録です。是非ご覧ください。
平成26年度 研修会 聴講記録:研修1
食品製造におけるHACCPによる工程管理の重要性
梅田 浩史 (厚生労働省医薬食品安全局食品安全部監視安全課 課長補佐)
HACCPとは
原材料の受け入れから最終製品までの工程毎に、微生物、化学物質、金属の混入などの、潜在的な危害要因を分析・特定(危害要因の分析:Hazard Analysis)した上で、危害の発生防止につながる特に重要な工程(重要管理点:Critical Control Point)を継続的に監視・記録する一連の工程管理システムのことである。HACCPの導入により、より効果的に問題のある製品の出荷を未然に防ぐことが可能となり、原因の追究を容易にすることが可能となる。
HACCPをめぐる海外の動き
米国では、1997年より、州を越えて取引される水産食品、食肉・食鳥肉及びその加工品、果実・野菜飲料について、順次、HACCPによる衛生管理を義務づけている。またEUでは、2006年より、一次生産を除く全ての食品の生産、加工、流通事業者にHACCPの概念を取り入れた衛生管理を義務づけている。なおHACCP要件の柔軟性も認められている。これ以外にも、カナダ、オーストラリア、韓国、台湾などでHACCP制度の義務付けがなされている。
日本におけるHACCP
1995年に、HACCPによる衛生管理を食品衛生法に位置づけた。いわゆる総合衛生管理製造過程承認制度である。この制度では、営業者の申請に応じて審査が行われ、厚生労働大臣が施設ごと、食品ごとに承認する制度であるが、対象となる食品が、食品衛生法に定められたもののみであり、導入が進んでいなかった。
HACCP普及に向けた新たな取組み
HACCP基準の導入に向けて、食品製造におけるHACCPによる工程管理の普及のための検討会が平成25年9月より開催され、HACCPによる工程管理を普及推進させるための施策等について検討されている。検討会では、これまでの施策の問題点や具体的な方針が示されている。食品衛生法に基づく衛生管理には、管理運営基準(ソフト面)と施設基準(ハード面)がある。今後は食品衛生法に基づく規定として、従来の管理運営基準に加え、HACCP導入型基準が設定され、HACCP普及のための準備と各自治体における条例化を踏まえ、平成27年4月1日より施行される予定である。
HACCPの実際
高度で難しいと考えられているHACCPであるが、食中毒予防の3原則(①つけない、②増やさない、③やっつける)に基づいたものであり、現在実施している衛生管理をベースにHACCP型に整理することで対応可能となる。
平成26年度 研修会 聴講記録:研修2
知っているようで知らないノロウイルス
片山 和彦 (国立感染症研究所 ウイルス第2部 第1室長)
ノロウイルスの特徴
ノロウイルスは冬季に大流行する非細菌性食中毒の原因ウイルスとして知られており、感染制御法の開発が望まれている。ノロウイルスの陽性者では、糞便耳かき一杯に1億個程度のウイルスが存在しており、人は100-1,000粒子程度を摂取することで感染が成立する。食品等を介する糞口感染が代表的であり、酸に強いため、胃を通過して腸に感染する。人とチンパンジー以外には感染せず、感受性細胞株が樹立されていない。ノロウイルス研究は感染制御を主な目的として実施されているが、株化細胞で増殖しないため動物モデルが存在しておらず、近縁種のマウスノロウイルスを代用として使うことが多い。
ノロウイルス研究の現状
小腸上皮細胞表面上の血液型決定抗原(Human Histo-Blood Group Antigen:HBGA)がノロウイルスの受容体と考えられている。・・・
ノロウイルスワクチンの可能性
ノロウイルス感染を完全に防ぐことはできないが、ノロウイルスワクチン開発の可能性はある。つまり感染緩和状態を目指したワクチン開発である。ワクチンの開発には、①抗原性の異なる遺伝子型のVirus-Like Particle(VLP)を全て準備してワクチンにする、②粒子構造維持のため変化できないアミノ酸配列を使ってワクチンを作る、③遺伝子工学により、弱毒化生ワクチンを開発する、道が考えられる。しかしワクチン開発と導入は慎重に行う必要があり、ノロウイルス感染、病原性発現機構を研究、解明しながら有効なワクチン開発に挑戦する必要がある。現在、国立感染症研究所ではワクチンシーズ開発プロジェクトが始動している。