今回の定期通信では、2009年11月26日に中央区立日本橋公会堂で開催されました、講演会のうち、『講演Ⅰ「CODEXの食品衛生部会における最近の動向」豊福 肇 先生(国立保健医療科学院)』のご講演内容の概要をご提供いたします。
『講演Ⅱ「微生物試験法の選定と妥当性確認」田中 廣行 先生(財団法人 日本食品分析センター 微生物部)』のご講演につきましては、月刊HACCP(鶏卵食肉情報センター)1月号に、「特集 国際化進む食品安全~微生物検査とFSMS最前線~」の冒頭(P20~P30)に詳しく紹介されていますので、あわせてご覧下さい。
平成21年度 総会・講演会 講演Ⅰ
CODEXの食品衛生部会における最近の動向
豊福 肇 (国立保健医療科学院)
CODEXとは
1962年に国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機間(WHO)により設立した国際政府間組織で食品規格委員会英語名では「Codex Alimentarius Commission」といいCACと略されます。現在182カ国と1地域連合(EU)が加盟しています。
活動の主な目的は、消費者の健康保護、食品の公正な取引の保護、の2点ですが、それを実行するために食品に関する国際規格や規範(CODEX規格)の作成を行っています。
CODEX委員会の組織には、一般問題部会、個別食品部会、特別部会、地域調整委員会などがありますが、食品の微生物問題を担当しているのが一般部会の一つである「食品衛生部会(CCFH)」です。
食品衛生部会:CCFHの役割
食品衛生部会の役割は以下の(a)~(g)に示すものです。
- すべての食品に適用される食品衛生に関する基礎的な規程を作成する。
- 個別食品部会によって準備された個別食品の規格に含まれる衛生に関する規程を検討し、必要があれば修正及び承認する。
- 個別食品部会によって準備された個別食品の“Code of Practice”に含まれる衛生に関する規程を検討、必要があれば修正及び承認する。
- 個別食品部会のToRの範囲としてできたかどうかを問わず、特定の食品(群)に適用される衛生規程を起草する。
- CACから割り当てられた特定の衛生問題について検討する。
- 国際レベルで微生物リスクアセスメントが必要な分野を示唆し、優先順位を付け、さらにリスクアセッサーに対する質問を作成する。
- 食品衛生とFAO及びWHOの微生物リスクアセスメントに関連して微生物リスクマネジメント事項を検討する。
食品衛生部会のこれまでの業績
食品衛生部会がこれまでに積重ねてきた主な業績は以下の通りです。
- 食品微生物規格の作成(1997年)
- 食品微生物のリスクアセスメントのガイドライン作成(1999年)
- 生鮮野菜と果実(スプラウト含む)の微生物学的基準の作成(2003年)
- ミルクの微生物学的基準の作成(2004年)
- 卵の微生物学的基準の作成(2007年)
- 調理済み食品中のL.monocytogenes(Lm)に関する微生物学的基準の作成(2007年)
- 微生物リスクマネジメントの実施要綱の作成(2007年))
- 乳幼児用調整粉乳及び幼児向けフォローアップ粉乳の微生物学的基準の作成(2008年)
- 食品安全管理手法の妥当性確認に関するガイドラインの作成(2008年)
最近の主な議論
食品衛生部会で最近議論されている主な課題は以下の通りです。
- 乳幼児調製粉乳に関する衛生規範・・・改訂の背景と調製粉乳の病原微生物規格、工程の衛生管理の規格について。
- 調理済み食品中のLmに関する微生物規格・・・微生物規格が必要でない食品(製造加工過程でLmを確実に死滅させ、かつ再汚染が起こり得ない調理済み食品)と微生物規格が必要な食品( [1]Lmが増殖しない食品、[2]Lmが増殖する食品、[3]Lmが限定されたレベルまでの増殖しか起こさない調理済み食品 )の規格の遵守率の検討について。
- 微生物学的リスク管理の実施に関する原則及びガイドラインの作成。
第41回食品衛生部会の主な議論
2009年11月16~20日に米国サンディエゴで開催された第41回食品衛生部会において、主に次のような議論が行われました。
- 鶏肉中のカンピロバクター及びサルモネラ属菌の管理のためのガイドラインの検討
- 生鮮野菜と果実に関する衛生実施規範の検討
- 海産食品における病原性ビブリオ属菌に関する衛生実施規範原案の検討
- 貝類中の腸炎ビブリオ及びビブリオ・バルフィニカスの管理手法についての付属文書の作成
- 食品中のウイルス制御に関する衛生実施規範の検討
- 食品衛生部会におけるリスク分析ポリシー