情報提供・Q&A
Journal / Q&A

情報提供・Q&A

これまで発行した定期通信をバックナンバーで揃えてご提供します。

また、皆様からいただきました「ご質問」に対する「回答」のうち、多くの方にお知らせしたいものを選びまして、Q&Aとしてお届けします。

Q&A

Q1(会員より)2022.2
食肉製品の成分規格で「クロストリジウム属菌(グラム陽性の芽胞形成桿菌であって亜硫酸を還元する嫌気性の菌をいう。以下同じ。)が、検体1gにつき 1,000以下でなければならない。」とされていますが、1000以下の根拠を知りたい。

A1「食肉製品のクロストリジウム属菌」については、加熱食肉製品(包装後加熱)と特定加熱食肉製品で「1000/g以下」という成分規格があり、加熱後の適正冷却の指標、という意味合いと理解しています。

加熱食肉製品の加熱殺菌条件としては、「製品は、その中心部の温度を63°で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法、又は・・・」、特定加熱食肉製品の場合は、「製品は、肉塊のままで、その中心部を次の表の第1欄に掲げる温度の区分に応じ、同表の第2欄に掲げる時間加熱し、又は・・・」と示されており、原料となる食肉に存在すると考えられるクロストリジウム属菌を殺菌できるような条件にはなっていません。

また保存基準も、加熱食肉製品では「加熱食肉製品は、10°以下で保存しなければならない。」、特定加熱食肉製品では「特定加熱食肉製品のうち、水分活性が 0.95 以上のものにあっては、4°以下で、水分活性が 0.95 未満のものにあっては、10°以下で保存しなければならない。」と示されています。

以上より、「1000/g以下」の根拠を説明することは出来ないのですが、原料となる食肉にはこの程度のクロストリジウム属菌は存在するから、加熱しても死滅できないし、加熱後の冷却と保存はしっかりしていただきたい、ということで暫定的に設けられた数値指標であると理解しています。

また、当時、当該委員会に出席していたが、クロストリジウム属菌の数(1000/g以下)については、黄色ブドウ球菌の成分規格(1000/g以下、非加熱食肉製品)に合わせて設定したと記憶している。

なお、当該改正の内容を解説した文献があります。ここにも明確な根拠までは示されていません。

“食肉製品の規格基準改正について”
Amendment of the Specification and Standards for Meat Productsリップ
楠博文 (厚生省 生活衛生局)
資料名:食品衛生研究  (Food Sanitation Research) 巻43号 7-21ページ
発行年:1993年07月

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Q2(会員より)2022.3

「食品衛生検査指針2018微生物篇」183ページには、MPN法cとして0,1,0,0で液体20、固体も20とされていますが、本文中には固体の場合は10倍希釈しているので10倍乗じるとあります。表2-6でa,b,d,eは、10倍されていますが、cのみ10倍されていません。MPN表を見ると0,1,0も0,0,1も同じ2となるためそのように記載されているようにも思えますが、そのことは、どこにも記載されておりません。しかも巻末の最確数表を見ると0,1,0は、2ではなく1.8です。

どうも本文に記されている最確数は、JIS規格K0350-20-10 : 2001の「用水・排水中の 大腸菌群試験方法」の最確数表から記しているのではないかと思われます。5,5,5が指針の表では≧18,000なのに≧16,000になっています。これもJIS K0350と合致します。明らかに記されていることとの矛盾を感じ質問させていただきました。

A2今回ご指摘の箇所は、大きく分けて以下2つの記載ミスかと思います。

① 液体2、固体20とすべきところを液体20、固体20と記載されている(桁違い)
② 巻末のMPN表(生食用かきの規格)と表2-6で数値が違う(1.8と2、1800と1600)
①については、検査指針の旧版(2004年版)から新版(2015、2018年版)に改訂されたときの転記ミスかと思われます。

旧版:液体2,固体20
新版:液体20,固体20

②については、旧版(2004年版)の表をそのまま新版(2015、2018年版)に引用されたのかと思いますが、本文の解説で、新版では生食用かきの規格におけるMPN値の算出法として記載したため、齟齬が生じてしまったように思われます。

旧版:本文でISOのMPN表をもとにMPNについて解説したのち、MPN値の算出手順を示すための事例としてまとめた別の表を記載
新版:生食用かきのMPN値算出法として旧版と同じ表(まとめた表)を引用(ISOのMPN表は本文から削除)

なお、表2-6に記載されているMPN値の2又は≧1,600がJIS K 0350から引用されているのではないかとのご見解については、そのとおりかもしれませんし、以下のような、別の見方もできます。

旧版(2004年版)ではISO 4831のMPN表に基づいて解説されているため、このMPN値を引用したようにも思えます。ここでは、「1.8」と「>1,600」が示されていますので、1.8は小数点以下を丸めたと解釈すれば「2」となり、表2-6と同じに見えます。ただし、旧版ではISOと同様「>」を用いて「>16,000」と記載されていますが、新版では「≧16,000」と「≧」を用いていますので、厳密には異なります。

補足ですが,現在ISO 4831のMPN表はISO 7218を参照するよう記載されています。
なお、MPNを算出する際に利用できる情報がありますので、ご紹介します。

米国EPAの"Most Probable Number (MPN) Calculator"
https://mostprobablenumbercalculator.epa.gov/mpnForm

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